資金調達方法が学べる参考資料
スタートアップの資金調達には、自己資金、融資、エクイティ(VC・エンジェル投資)、助成金・補助金、クラウドファンディングなど多様な手段があります。にもかかわらず、公的機関ですらVCからのエクイティ調達を前提とする資料が散見され、かなり偏りと違和感を感じます。そこで、本コンテンツでは、まず資金調達方法の全体像を俯瞰できる公的機関の資料を紹介し、その後、各手法について紹介します。ライフサイエンス・ヘルスケア領域のスタートアップ経営者・研究者が、能動的に調達方法を選択できるようになることを支援します。
| 成長ステージ | 主な資金調達方法 |
|---|---|
| 創業期(シード期) | 自己資金 / エンジェル投資家 / VC / コンバーティブル(J-KISS等) / クラウドファンディング / 助成金・補助金 / 科研費 |
| 成長期(アーリー期) | VC / 銀行融資・公的融資 / CVC・事業会社出資 / 助成金・補助金 |
| 拡大期(ミドル・レイター期) | シリーズB・C / CVC / デットファイナンス / 海外からの資金調達 |
| 成熟期(IPO準備期・EXIT) | IPO(新規株式公開) / M&A |
まず読むべき総論資料 ― 資金調達方法の全体像を学ぶ
資金調達の個別手法を学ぶ前に、まず「どのような選択肢があるのか」全体像を把握することが重要です。以下の公的機関資料は、創業から成長・EXITまでの流れの中で、各資金調達方法の位置づけと特徴を体系的に解説しています。
【最初に読む】日本政策金融公庫『創業の手引』
- 概要:創業の流れ(事業計画策定→法人設立→資金調達→開業)の中で、自己資金・融資・出資(VC等)・補助金・クラウドファンディングを位置づけて解説。資金計画の立て方と合わせて学べるため、「資金調達がなぜ必要か」から理解したい読者に最適。
- 提供:日本政策金融公庫
- URL:https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/pdf/sougyou_tebiki_book_202506_00.pdf
- 補足:2025年6月版(最新)。毎年6月頃に更新される。
【補完資料】J-Net21 起業マニュアル「お金を準備する」
- 概要:「資金調達方法」ページで、自己資金・金融機関借入・出資・補助金・クラウドファンディング等を手法別にメリット・デメリット付きで一覧解説。各手法の個別解説ページへのリンクも充実。
- 提供:独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)
- URL(第4章トップ):https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list4/index.html
- URL(資金調達方法・総論):https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list4/4-2-1.html
各資金調達方法の解説と参考資料
自己資金
- 概要:創業者自身の貯蓄等。返済不要・株式希薄化なしだが、調達額に限界がある。日本政策金融公庫の調査によれば、開業時の資金調達額に占める自己資金の割合は平均24.5%(2024年度新規開業実態調査)。
- 参考資料:J-Net21「自己資金の準備」 https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list4/4-2-2.html
融資(公的融資・銀行融資)
- 概要:返済義務はあるが株式を希薄化させない資金調達手法。創業期は民間銀行からの融資が難しいため、日本政策金融公庫(公庫)や信用保証制度付き融資が中心となる。
- 公庫の創業融資:2024年4月の制度改正で「新規開業・スタートアップ支援資金」に一本化。融資限度額7,200万円(従来3,000万円から拡大)、自己資金要件撤廃、原則無担保・無保証人。
- 参考資料:
- 日本政策金融公庫「創業支援」ポータル https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/
- 日本政策金融公庫「スタートアップ支援資金」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/startup.html
- J-Net21「日本政策金融公庫の活用」 https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list4/4-3-3.html
- J-Net21「制度融資の活用」 https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list4/4-3-2.html
- 東京都創業NET「融資・助成制度」 https://www.tokyo-sogyo-net.metro.tokyo.lg.jp/finance/
- ライフサイエンスSU向け補足:研究開発期間が長く売上が立たない創薬・医療機器ベンチャーでは、融資単独では資金が不足するケースが多い。NEDO STS等の補助金やVC出資と組み合わせるのが一般的。
エンジェル投資家
- 概要:個人投資家が自己資金でスタートアップに出資する手法。シード期に少額(数百万〜数千万円)を調達でき、投資家の知見・ネットワークも得られる。エンジェル税制の対象となる場合がある。
- 参考資料:経産省「エンジェル税制」 https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/angeltax/index.html
ベンチャーキャピタル(VC)
- 概要:ファンドから出資を受ける。返済不要だが株式(エクイティ)を渡すため経営権の希薄化が起こる。ハンズオン支援(経営・戦略助言、ネットワーク紹介等)を受けられることが大きなメリット。ライフサイエンス領域では、AMED認定VCによる出資がAMED助成金の前提条件となる事業もある。
- 参考資料:
- NEDO スタートアップ支援ポータル「StarTips」 https://startips.nedo.go.jp/ ― VCのビジネスモデル、資本政策等に関する情報を集約
- 経産省「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」 https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/ventureinvestnotice.html ― 投資契約・株主間契約の各条項の留意点
- AMED「大学発創薬ベンチャー スタートアップ・ガイド(第1版)」STEP 3「投資家の支援を受ける」 https://www.amed.go.jp/program/list/19/02/005suguide.html ― 創薬ベンチャー向けVC調達の実践マニュアル
コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)・事業会社からの出資
- 概要:製薬企業・医療機器メーカー等の事業会社がスタートアップに出資。資金だけでなく、開発パイプライン・製造・販売チャネル等との連携が見込める。一方、競合他社への情報流出リスクや、戦略的方向性の制約が生じる可能性がある。
- 参考資料:経産省「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」 https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/houkokusyo/financeguidance.pdf ― CVC・事業会社からの出資を含むファイナンス全体像を解説
コンバーティブル(J-KISS・新株予約権付社債等)
- 概要:シード期にバリュエーション(企業価値評価)を確定させずに資金調達する手法。将来のエクイティラウンドで株式に転換される新株予約権(J-KISS等)や新株予約権付社債(転換社債)等がある。交渉コストが低く、スピーディーに調達できるメリットがある。
- 参考資料:経産省「『コンバーティブル投資手段』活用ガイドライン」(2020年12月) https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/open_innovation/convertible_guideline/convertible_guideline.html ― J-KISS等の実務処理、相場水準、交渉ポイントを解説する唯一の公的ガイド
助成金・補助金(AMED・NEDO・JST・経産省・SBIR等)
- 概要:返済不要・株式希薄化なしの公的資金。ただし後払い(精算払い)が多く、対象経費や報告義務がある。ライフサイエンス領域では、AMED・NEDO・JSTが中心的な助成機関であり、創薬、医療機器、再生医療等製品、ヘルステック等の分野に応じた事業が用意されている。
- jpnpro.com関連ページ:
- 『公的助成金・補助金の活用ガイド』 https://www.jpnpro.com/utilization-of-public-grants-and-subsidies-j.html
- 『AMED支援リスト』 https://www.jpnpro.com/amed.html
- 『公的支援機関リスト』 https://www.jpnpro.com/publicsupportingorg-j.html
- 助成金・補助金の検索ツール:
- ミラサポplus(中小企業庁の補助金・支援制度の総合検索ポータル) https://mirasapo-plus.go.jp/
- jGrants(Jグランツ)(デジタル庁運営の補助金電子申請システム) https://www.jgrants-portal.go.jp/
- J-Net21 支援情報ヘッドライン(国・自治体の補助金・助成金・融資・セミナーを地域別に横断検索) https://j-net21.smrj.go.jp/snavi/index.html
- e-Rad(府省共通研究開発管理システム)(AMED・NEDO・JST等の研究開発系公募の応募窓口) https://www.e-rad.go.jp/
科研費(JSPS科学研究費助成事業)
- 概要:大学・研究機関の研究者が学術研究のために取得する競争的資金。スタートアップ(営利企業)が直接申請するものではないが、アカデミア発スタートアップでは、科研費で得た研究成果がカーブアウトの起点になることが多い。研究者がスタートアップに関わる場合、科研費の使途ルール(研究専従義務、兼業規定等)を理解しておく必要がある。
- 参考資料:JSPS「科研費ハンドブック(研究者用2025年度版)」 https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/15_hand/index.html
クラウドファンディング
- 概要:インターネットを通じて不特定多数から資金を集める方法。購入型(製品・サービスのリターン提供)、寄付型、金融型(株式投資型・融資型)がある。製品コンセプトの市場検証を兼ねられるメリットがある。株式投資型クラウドファンディングの発行上限は、2024年10月の日本証券業協会規則改正により1億円未満から5億円未満に拡大された。
- 参考資料:
- J-Net21「資金調達方法」(クラウドファンディングの項) https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list4/4-2-1.html
- 日本証券業協会「株式投資型クラウドファンディング」 https://market.jsda.or.jp/shijyo/kabucrowdfunding/index.html
IPO(新規株式公開)
- 概要:証券取引所に株式を上場し、広く一般投資家から資金を調達する。創業者・VCにとってのEXIT手段でもある。東証グロース市場が主な対象。2025年4月に上場維持基準の見直しが決定され、上場5年経過後から時価総額100億円以上が求められる(2030年3月以降適用)。
- 参考資料:東京証券取引所「新規上場ガイドブック」 https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/new/guide-new/index.html
M&A
- 概要:事業会社への売却(M&A)によるEXIT。IPOと並ぶ主要なEXIT手段であり、ヘルスケア領域では製薬企業・医療機器メーカーによる買収が多い。近年、日本政府はIPO偏重からM&A活用への転換を推進しており、スタートアップ売り手側の視点に立った公的資料も整備されつつある。
- 参考資料:
- 経産省「スタートアップ・ファイナンス研究会 とりまとめ」(2024年6月) https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/startup_finance/20240624_report.html ― IPO偏重からM&A活用への転換、バリュエーションの考え方等を政策論として整理
- 経産省「大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書」 https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/mahoukokusyo.html ― 価格決定プロセス、買収後のIR等を売り手・買い手双方の視点で解説
- 経産省「スタートアップのM&A活用に関する調査」(令和5年度) https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/r5reportforstartupgrowth/r5reportforstartupgrowth_MA.pdf ― IPO前M&Aの実現ポイント、EXIT選択肢としてのM&Aの位置づけを実例で解説
海外からの資金調達
- 概要:海外VCからの出資、海外アクセラレーターへの参加等。JETRO等の公的機関が海外展開・海外投資家とのマッチングを支援している。
- 参考資料:JETRO「スタートアップ海外展開支援」 https://www.jetro.go.jp/services/startup.html
マッチング支援窓口
どの資金調達手法を選ぶべきか迷ったとき、また投資家や事業会社とのマッチングを求めるときは、以下の公的機関のワンストップ窓口が利用できます。
Plus One(政府系機関連携ワンストップ相談窓口)
- 概要:AMED・NEDO・JST・日本公庫・JETRO・JIC・DBJ・中小機構・特許庁等22機関が連携するスタートアップ向けワンストップ相談窓口。「どの公的機関に相談すべきか分からない」段階での最初の入口として機能する。資金調達(助成金・融資・出資)、海外展開、知財、人材育成、施設利用、マッチング等の相談カテゴリがあり、適切な機関に橋渡しされる。
- 運営:NEDO
- URL:https://www.nedo.go.jp/activities/startups/plusone.html
Healthcare Innovation Hub(InnoHub)
- 概要:経済産業省が設置するヘルスケア・ライフサイエンス領域に特化したベンチャー支援窓口。アドバイザーやサポーター企業とのマッチング、事業会社との連携・協業の仲介、海外展開支援プログラム(J-StarX AI Medicalコース等)の情報集約を行う。ライフサイエンス・ヘルスケア分野に特化したマッチング機能を持つ点がPlus Oneとの違い。
- URL:https://healthcare-innohub.go.jp/