医療機器該当性確認ガイド
医療機器に該当するかは、簡単に言えば医療機器の定義に該当するかどうかですが、最近は当局がガイドラインや通知などで事例をまとめているので、それらも参照することで自分でもある程度判断ができるようになっています。
医療機器の定義
医療機器の定義(薬機法第2条第4項)1
「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるものをいう。
・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年08月10日法律第145号)、000273985.pdf
この定義を分解すると下記となる。
該当性の見当の付け方
医療機器プログラム該当性判断のポイント
プログラムの医療機器(SaMD)でも、該当性判断の考え方は同じで、使用目的及びリスクの程度で総合的に判断されます。
その他該当性判断に有用な参照資料
該当性を窓口で相談
最終的には規制当局窓口に確認する
医療機器かプログラム医療機器かで窓口が変わる
医療機器の該当性に関する相談窓口一覧(PMDA) https://www.pmda.go.jp/files/000225620.pdf
当局相談前に準備しよう
規制当局へ相談する際は、的確な回答を得るために以下の情報を事前に整理し、資料として準備することが推奨される。
<参考(有体物の事例)>
<参考(Apple Watchの事例)>
Apple Watchでは様々な生体関連情報をみることができますが、同じデバイス上に「医療機器プログラム」と「非医療機器(医療機器に該当しないプログラム)」が混在しています。これらを見ることでも、医療機器(SaMD)の該当性が理解しやすくなります。
医療機器に該当する機能
① 心電図アプリ(ECG) — クラスII管理医療機器
承認番号:30200BZI00020000(家庭用心電計プログラム)
一般的名称:家庭用心電計プログラム
ユーザーが安静時にApple Watchを手首に装着し、対側の指でDigital Crownに30秒間触れ続けることで、第Ⅰ誘導心電図に類似したシングルチャネル心電図を取得します。
取得した心電図をアプリが解析し、洞調律又は心房細動を示唆する波形に分類して、ユーザーに通知します。
該当理由:取得した心電図データを独自アルゴリズムが解析し、「洞調律」か「心房細動示唆」かを分類して通知するという医学的推論を行っており、疾病の早期発見に寄与することを明確に目的としているため、疾病診断用プログラムとしてクラスIIの管理医療機器に位置づけられています。
② 不規則な心拍の通知 — クラスII管理医療機器
承認番号:30200BZI00021000(家庭用心拍数モニタプログラム)
一般的名称:家庭用心拍数モニタプログラム
Apple Watchにより取得した脈拍データをバックグラウンドで定期的(概ね2時間毎、安静時)に測定し、安静時の連続した10拍の脈拍を取得できた場合にその情報を解析します。
解析の結果、「規則的な心拍」と、心房細動を示唆する「不規則な心拍」に分類し、連続した5回の計測で「不規則な心拍」と分類された場合のみユーザーに通知します。
該当理由:ユーザーの操作なしにバックグラウンドで自律的にデータ取得→解析→分類→条件付き通知を行い、心房細動という具体的な不整脈の兆候を検出して受診を促すことを目的としているため、疾病診断用の家庭用心拍数モニタプログラムとしてクラスIIの管理医療機器に分類されています。
③ 睡眠時無呼吸の通知 — クラスII管理医療機器(2024年9月承認)
承認番号:30600BZI00017000
一般的名称:家庭用体動情報解析プログラム(JMDNコード:71132002)
本品は、睡眠時無呼吸の兆候を検出し、使用者へ睡眠時無呼吸の可能性の通知を行う家庭用のプログラムです。
Apple Watchの加速度センサーから得られた体動情報を用いて、睡眠中の正常な呼吸パターンの中断に関連する手首のわずかな動きを検出し、1時間あたりの呼吸の乱れ(BD値)を算出します。
30日ごとに、Apple Watchは30日分のBD値を集計・分析し、「呼吸の乱れ」が中等度から重度の睡眠時無呼吸を示唆するレベルで一貫して「高い」場合には、ユーザーに睡眠時無呼吸の可能性を通知します。
該当理由:加速度センサーの生データを30日間蓄積→アルゴリズムが解析→「高い/高くない」に分類→30日単位での条件判定→中等度から重度の睡眠時無呼吸の可能性を通知、という多段階の医学的推論を行っており、中等度〜重度の睡眠時無呼吸のスクリーニングを目的とする疾病診断用プログラムとしてクラスIIの管理医療機器に承認されています。
非医療機器の機能
④ 心拍数の数値表示 — 非医療機器
光学式心拍センサーで脈拍数(bpm)を測定し、心拍数アプリやヘルスケアアプリで時系列グラフや平均値として表示する機能です。
非該当理由:測定した数値をそのまま記録・表示したり、グラフ化するだけであり、プログラム側で特定の疾病の有無を判定したり、受診勧奨まで行うことを目的としていません。
厚労省ガイドラインでも、「データの表示・保管・転送」「単なるグラフ化・統計処理」は医療機器に該当しない典型例とされています。心拍数表示機能はこのカテゴリーに該当し、②の「不規則な心拍の通知」(疾病兆候検出を目的とした別プログラム)とは明確に分かれています。
⑤ 血中酸素ウェルネス(SpO2) — 非医療機器
Appleの血中酸素ウェルネスアプリは、「血中に取り込まれた酸素のレベルを手首からオンデマンドまたはバックグラウンドで測定し、全体的なウェルネスの状態を知るための機能」であり、「医療目的ではなく、あくまで一般的なフィットネスとウェルネスを目的としたもの」と明記されています。
非該当理由:AppleはSpO2の数値を測定・表示するだけで、「○%以下なので受診してください」「特定の呼吸器疾患が疑われます」といった具体的な疾病診断や受診勧奨を行わない設計とし、目的を「ウェルネス」「フィットネス」に限定しています。
厚労省通知では、血中酸素飽和度測定機器は原則として医療機器に該当する一方、「健康な者を対象とし、運動におけるトレーニングの効果・効率の向上や運動強度の管理(運動管理)を主たる目的とするもの」は非該当とされています。
Appleのように「ウェルネス/フィットネス」を前面に出し、疾病の兆候検出や受診勧奨に踏み込まない設計にしていることは、この非該当の枠組みに沿ったものと解釈できます。
なお、同じセンサーで同じデータを測定していても、「SpO2が○%以下の状態が一定期間続いたため、特定の疾患の疑いあり。受診を推奨」といった疾病リスク判定と受診勧奨まで行うようなプログラムであれば、血中酸素飽和度に関する厚労省通知やプログラム医療機器ガイドライン上、医療機器プログラムに該当すると判断される可能性が高くなります。
⑥ 睡眠トラッキング — 非医療機器
加速度センサーと心拍センサーを用いて入眠・起床時刻やレム/コア/深い睡眠などの睡眠ステージを推定し、睡眠時間や睡眠の質をグラフ表示する機能です。
非該当理由:睡眠の量と質を可視化して長期的な傾向を確認することを目的としており、特定の疾病(睡眠時無呼吸など)の診断・検出を行いません。
③の「睡眠時無呼吸の通知」は、同じく睡眠中の体動データを用いますが、中等度〜重度の睡眠時無呼吸を示唆するパターンを検出し、通知・受診勧奨まで行う疾病診断用プログラムとして別途クラスII管理医療機器として承認されており、睡眠トラッキング機能とは法的にも機能的にも別のものです。
⑦ 歩数・消費カロリー・運動量 — 非医療機器
加速度センサーやGPSを用いて歩数、移動距離、消費カロリー、ワークアウト量などを測定・表示し、日々のアクティビティを記録する機能です。
非該当理由:これらはフィットネス/ウェルネス目的の「運動管理」に該当し、特定の疾病の診断や治療方針決定に用いることを目的としていません。
ガイドライン上も、「スポーツのトレーニング管理等の医療・健康以外を目的とするプログラム」は、疾病の診断や病態把握を目的としない限り医療機器には該当しないとされています。
⑧ 皮膚温測定(手首皮膚温) — 非医療機器
就寝中の手首皮膚温の変動を記録し、周期的な変化やトレンドをヘルスケアアプリの指標として表示する機能です。Appleは、これらの温度データを医療目的の診断に用いることを意図していない旨をヘルスケア関連ページで明記しています。
非該当理由:体温の変動トレンドを表示するのみで、「発熱」「感染症」などの診断や受診勧奨を直接行わず、医師による診断を代替しない情報提供に留まるため、ガイドライン上は「健康状態の記録・表示」に相当し医療機器には該当しません。
⑨ 高心拍数/低心拍数のアラート — 非医療機器(ただし設計次第でグレーゾーンに近づき得る部分)
ユーザーがApple WatchまたはiPhone上で設定した心拍数のしきい値(例:高心拍数120 bpm以上/低心拍数40 bpm以下)を超えた(または下回った)状態が一定時間続いた場合に、通知を表示する機能です。
非該当理由:
医療機器の定義
医療機器の定義(薬機法第2条第4項)1
「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるものをいう。
・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年08月10日法律第145号)、000273985.pdf
この定義を分解すると下記となる。
- 使用目的: 人や動物の「疾病の診断、治療、予防」に使用されること。または、人や動物の「身体の構造・機能に影響を及ぼす」こと。
- 形態: 機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品、プログラム(ソフトウェア)およびその記録媒体であること。
- 政令による指定: 上記の要件を満たしていても、最終的に政令で指定されているものであること。
該当性の見当の付け方
- 医療機器の定義、使用目的などから、医療機器に該当しそうか確認
- 類似品があればその製品が医療機器かどうかをチェック
- SaMDであれば、「プログラムの医療機器該当性ガイドライン」のフローチャートや事例を確認
https://www.pmda.go.jp/files/000240233.pdf - 余裕があれば以下の一般的名称もチェック
- 一般的名称リストから当てはまるものがあるか確認
- 類似品のHPや添付文書などを見て一般的名称を確認
- 当該一般的名称の定義にあてはまるようなら、医療機器の可能性が高い
- 一般的名称とは
医療機器をその特性や用途に応じてグループ分けするための「分類名」のようなもの。一般的名称がわかるとクラス分類や順守すべき規則もわかります。
一般的名称検索(PMDA)、https://www.std.pmda.go.jp/stdDB/index.html
医療機器の一般的名称への該当性判断に関する質疑応答集(Q&A)について、https://www.std.pmda.go.jp/stdDB/Data/RefStd/Std_etc/H290929_0000000_01.pdf
医療機器プログラム該当性判断のポイント
プログラムの医療機器(SaMD)でも、該当性判断の考え方は同じで、使用目的及びリスクの程度で総合的に判断されます。
- 「特定のプログラムが、医薬品医療機器等法の医療機器に該当するか否かは、製造販売業者等による当該製品の表示、説明資料、広告等に基づき、当該プログラムの使用目的及びリスクの程度が医療機器の定義に該当するかにより判断される。」
- プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン、厚労省、https://www.pmda.go.jp/files/000240233.pdf
- プログラムの医療機器該当性について(基本的な考え方)、厚労省、https://www.pmda.go.jp/files/000273985.pdf
- 最も重要な判断基準は、製造販売業者が製品をどのような目的で市場に出すかです。製品のラベル、取扱説明書、広告、ウェブサイトなどで謳われる効果効能(表示・広告)に基づいて、規制当局は「使用目的」を判断します。
- 例:同じEMS機器でも、「筋肉を鍛える」という目的であれば雑貨、「筋肉の萎縮改善」という医学的効果を謳うと医療機器となる。
- リスクの程度によりクラス分類されます。
- プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン解説書(医機連編) 判断フローチャート等
- SaMDにはクラスIは存在しない
- 機能の障害が生じた場合でも、人の生命および健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの、すなわちクラスI相当の一般医療機器に該当するプログラムは、法令上の医療機器の範囲から除外される。
- プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン (令和5年3月31日改正)、「該当性の基本的考え方」、厚生労働省
- 機能の障害が生じた場合でも、人の生命および健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの、すなわちクラスI相当の一般医療機器に該当するプログラムは、法令上の医療機器の範囲から除外される。
- 「有体物と一体として流通するプログラムは、有体物部分も含めて、一体の製品として医療機器該当性を判断することとなる。」
- プログラムの医療機器該当性について(基本的な考え方)、厚生労働省、https://www.pmda.go.jp/files/000273985.pd
- 000252002.pdf P5
その他該当性判断に有用な参照資料
- 医療機器にはどんなものがありますか。(PMDA)、https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-devices/qa/0016.html
- 医療機器の一般的名称への該当性判断に関する質疑応答集(Q&A)について、https://www.std.pmda.go.jp/stdDB/Data/RefStd/Std_etc/H290929_0000000_01.pdf
- 医療機器への該当性を調べよう(JAAME)、https://www.jaame.or.jp/program/investigate.html
- プログラムの医療機器該当性判断事例について(PMDA)、https://www.pmda.go.jp/files/000251980.pdf
- プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインの一部改正について 000252002.pdf
- プログラムの医療機器該当性判断事例について
該当性を窓口で相談
最終的には規制当局窓口に確認する
医療機器かプログラム医療機器かで窓口が変わる
医療機器の該当性に関する相談窓口一覧(PMDA) https://www.pmda.go.jp/files/000225620.pdf
- 医療機器 > 都道府県薬務課
- プログラム医療機器 > SaMD一元的相談窓口(医療機器プログラム総合相談)SaMD一元的相談窓口(PMDA) https://www.pmda.go.jp/review-services/f2f-pre/strategies/0011.html
当局相談前に準備しよう
規制当局へ相談する際は、的確な回答を得るために以下の情報を事前に整理し、資料として準備することが推奨される。
- 製品の名称および概要:製品が何で、どのような機能を持つか。
- 使用目的および対象者:誰が、どのような状況で、何を目的として使うのか。
- 作動原理・アルゴリズム:どのように機能するかの技術的な説明。
- 入出力情報:どのような情報を入力し、どのような情報を出力するのか。
- 類似医療機器の調査:国内外で既に承認されている類似製品の有無とその分類情報。
- 広告・販促資料(案):ウェブサイトのモックアップやパンフレット案など、想定される表示・広告の内容。
- 医療機器の該当性に関する相談に当たって(PMDA)、https://www.pmda.go.jp/files/000225620.pdf
- PMDA SaMD一元的相談窓口(申込方法・様式)、https://www.pmda.go.jp/review-services/f2f-pre/strategies/0011.html
<参考(有体物の事例)>
- 機能はほぼ同じだが、使用目的等により非医療機器、医療機器に分かれる(意図的に分けている)よい事例を紹介します。
- サイバーダイン社のHAL®(Hybrid Assistive Limb®)
- 装着型の機器で、皮膚表面の生体電位信号を読み取り、装着者の「動きたい」という意思に合わせて動作を助けます。医療用は医療機器として主に医療現場で使用され、非医療用は介護や作業支援に使われています。
- HAL®自立支援用下肢タイプ Pro - CYBERDYNE (非医療機器)
- 治療を目的とせず、「弱った筋肉の動きをアシストして、立ち座りや歩行を楽にする」ことを目的としています。この場合、薬機法上の「医療機器」の定義(疾病の診断・治療・予防)には当たりません。
- HAL医療用下肢タイプ (JPモデル) - CYBERDYNE (医療機器)
- 特定の疾病の患者(緩徐進行性の神経・筋疾患により歩行機能が低下した患者)を対象に、歩行機能改善を目的としています。
- 医療用は、臨床試験を行い歩行機能改善効果を証明したうえで、医療機器として承認されています。
- HPや製品の表現も異なりますので、参考にしましょう。
<参考(Apple Watchの事例)>
Apple Watchでは様々な生体関連情報をみることができますが、同じデバイス上に「医療機器プログラム」と「非医療機器(医療機器に該当しないプログラム)」が混在しています。これらを見ることでも、医療機器(SaMD)の該当性が理解しやすくなります。
医療機器に該当する機能
① 心電図アプリ(ECG) — クラスII管理医療機器
承認番号:30200BZI00020000(家庭用心電計プログラム)
一般的名称:家庭用心電計プログラム
ユーザーが安静時にApple Watchを手首に装着し、対側の指でDigital Crownに30秒間触れ続けることで、第Ⅰ誘導心電図に類似したシングルチャネル心電図を取得します。
取得した心電図をアプリが解析し、洞調律又は心房細動を示唆する波形に分類して、ユーザーに通知します。
該当理由:取得した心電図データを独自アルゴリズムが解析し、「洞調律」か「心房細動示唆」かを分類して通知するという医学的推論を行っており、疾病の早期発見に寄与することを明確に目的としているため、疾病診断用プログラムとしてクラスIIの管理医療機器に位置づけられています。
② 不規則な心拍の通知 — クラスII管理医療機器
承認番号:30200BZI00021000(家庭用心拍数モニタプログラム)
一般的名称:家庭用心拍数モニタプログラム
Apple Watchにより取得した脈拍データをバックグラウンドで定期的(概ね2時間毎、安静時)に測定し、安静時の連続した10拍の脈拍を取得できた場合にその情報を解析します。
解析の結果、「規則的な心拍」と、心房細動を示唆する「不規則な心拍」に分類し、連続した5回の計測で「不規則な心拍」と分類された場合のみユーザーに通知します。
該当理由:ユーザーの操作なしにバックグラウンドで自律的にデータ取得→解析→分類→条件付き通知を行い、心房細動という具体的な不整脈の兆候を検出して受診を促すことを目的としているため、疾病診断用の家庭用心拍数モニタプログラムとしてクラスIIの管理医療機器に分類されています。
③ 睡眠時無呼吸の通知 — クラスII管理医療機器(2024年9月承認)
承認番号:30600BZI00017000
一般的名称:家庭用体動情報解析プログラム(JMDNコード:71132002)
本品は、睡眠時無呼吸の兆候を検出し、使用者へ睡眠時無呼吸の可能性の通知を行う家庭用のプログラムです。
Apple Watchの加速度センサーから得られた体動情報を用いて、睡眠中の正常な呼吸パターンの中断に関連する手首のわずかな動きを検出し、1時間あたりの呼吸の乱れ(BD値)を算出します。
30日ごとに、Apple Watchは30日分のBD値を集計・分析し、「呼吸の乱れ」が中等度から重度の睡眠時無呼吸を示唆するレベルで一貫して「高い」場合には、ユーザーに睡眠時無呼吸の可能性を通知します。
該当理由:加速度センサーの生データを30日間蓄積→アルゴリズムが解析→「高い/高くない」に分類→30日単位での条件判定→中等度から重度の睡眠時無呼吸の可能性を通知、という多段階の医学的推論を行っており、中等度〜重度の睡眠時無呼吸のスクリーニングを目的とする疾病診断用プログラムとしてクラスIIの管理医療機器に承認されています。
非医療機器の機能
④ 心拍数の数値表示 — 非医療機器
光学式心拍センサーで脈拍数(bpm)を測定し、心拍数アプリやヘルスケアアプリで時系列グラフや平均値として表示する機能です。
非該当理由:測定した数値をそのまま記録・表示したり、グラフ化するだけであり、プログラム側で特定の疾病の有無を判定したり、受診勧奨まで行うことを目的としていません。
厚労省ガイドラインでも、「データの表示・保管・転送」「単なるグラフ化・統計処理」は医療機器に該当しない典型例とされています。心拍数表示機能はこのカテゴリーに該当し、②の「不規則な心拍の通知」(疾病兆候検出を目的とした別プログラム)とは明確に分かれています。
⑤ 血中酸素ウェルネス(SpO2) — 非医療機器
Appleの血中酸素ウェルネスアプリは、「血中に取り込まれた酸素のレベルを手首からオンデマンドまたはバックグラウンドで測定し、全体的なウェルネスの状態を知るための機能」であり、「医療目的ではなく、あくまで一般的なフィットネスとウェルネスを目的としたもの」と明記されています。
非該当理由:AppleはSpO2の数値を測定・表示するだけで、「○%以下なので受診してください」「特定の呼吸器疾患が疑われます」といった具体的な疾病診断や受診勧奨を行わない設計とし、目的を「ウェルネス」「フィットネス」に限定しています。
厚労省通知では、血中酸素飽和度測定機器は原則として医療機器に該当する一方、「健康な者を対象とし、運動におけるトレーニングの効果・効率の向上や運動強度の管理(運動管理)を主たる目的とするもの」は非該当とされています。
Appleのように「ウェルネス/フィットネス」を前面に出し、疾病の兆候検出や受診勧奨に踏み込まない設計にしていることは、この非該当の枠組みに沿ったものと解釈できます。
なお、同じセンサーで同じデータを測定していても、「SpO2が○%以下の状態が一定期間続いたため、特定の疾患の疑いあり。受診を推奨」といった疾病リスク判定と受診勧奨まで行うようなプログラムであれば、血中酸素飽和度に関する厚労省通知やプログラム医療機器ガイドライン上、医療機器プログラムに該当すると判断される可能性が高くなります。
⑥ 睡眠トラッキング — 非医療機器
加速度センサーと心拍センサーを用いて入眠・起床時刻やレム/コア/深い睡眠などの睡眠ステージを推定し、睡眠時間や睡眠の質をグラフ表示する機能です。
非該当理由:睡眠の量と質を可視化して長期的な傾向を確認することを目的としており、特定の疾病(睡眠時無呼吸など)の診断・検出を行いません。
③の「睡眠時無呼吸の通知」は、同じく睡眠中の体動データを用いますが、中等度〜重度の睡眠時無呼吸を示唆するパターンを検出し、通知・受診勧奨まで行う疾病診断用プログラムとして別途クラスII管理医療機器として承認されており、睡眠トラッキング機能とは法的にも機能的にも別のものです。
⑦ 歩数・消費カロリー・運動量 — 非医療機器
加速度センサーやGPSを用いて歩数、移動距離、消費カロリー、ワークアウト量などを測定・表示し、日々のアクティビティを記録する機能です。
非該当理由:これらはフィットネス/ウェルネス目的の「運動管理」に該当し、特定の疾病の診断や治療方針決定に用いることを目的としていません。
ガイドライン上も、「スポーツのトレーニング管理等の医療・健康以外を目的とするプログラム」は、疾病の診断や病態把握を目的としない限り医療機器には該当しないとされています。
⑧ 皮膚温測定(手首皮膚温) — 非医療機器
就寝中の手首皮膚温の変動を記録し、周期的な変化やトレンドをヘルスケアアプリの指標として表示する機能です。Appleは、これらの温度データを医療目的の診断に用いることを意図していない旨をヘルスケア関連ページで明記しています。
非該当理由:体温の変動トレンドを表示するのみで、「発熱」「感染症」などの診断や受診勧奨を直接行わず、医師による診断を代替しない情報提供に留まるため、ガイドライン上は「健康状態の記録・表示」に相当し医療機器には該当しません。
⑨ 高心拍数/低心拍数のアラート — 非医療機器(ただし設計次第でグレーゾーンに近づき得る部分)
ユーザーがApple WatchまたはiPhone上で設定した心拍数のしきい値(例:高心拍数120 bpm以上/低心拍数40 bpm以下)を超えた(または下回った)状態が一定時間続いた場合に、通知を表示する機能です。
非該当理由:
- しきい値自体はユーザーが任意に選択するものであり、プログラム側が独自の医療アルゴリズムで特定疾患の有無や重症度を判定しているわけではありません。
- 通知内容も、「安静時であるにもかかわらず設定したBPMを上回る/下回る状態が続いた」ことを知らせるにとどまり、特定の疾病名を提示したり、受診勧奨を行うことを主目的とはしていません。
- 一方で、独自のアルゴリズムで個々の患者の状態を解析し、「熱中症の兆候あり」「特定疾患の疑い」といった診断的な評価や受診勧奨を行うプログラムは、疾病診断・予防を目的とする医療機器プログラムに該当すると整理されています。
- したがって、高心拍数/低心拍数アラート機能は、現状のAppleの仕様のように「ユーザー任意の単純なしきい値比較+注意喚起」にとどまる限りは非該当と考えられますが、仮に将来、医学的ガイドラインや独自アルゴリズムに基づいて特定疾患の疑いを判定し、受診勧奨まで含めるような設計に変われば、医療機器プログラムに該当し得るグレーゾーンに近づくといえます。