個人情報を利用する製品開発時に留意すべき法規制
医療・健康情報を活用した製品・サービスの開発では、個人情報保護法をはじめ複数の法規制・ガイドラインが重複して適用されます。本ページは、医療・ヘルスケア/介護テック分野のスタートアップ経営者や研究者に向けて、開発の初期段階で押さえるべき主要な規制(個人情報保護法、3省2ガイドライン、生命科学・医学系研究倫理指針、次世代医療基盤法、薬機法)の要点と、それぞれの一次情報の入口を整理したものです。あわせて、新規ビジネスの設計段階で個人情報保護委員会(PPC)に無料で相談できる公的窓口も紹介します。制度は改正が続くため、詳細は必ず各省庁・委員会の公式サイトで最新版をご確認ください。必要に応じて、公的相談窓口または弁護士などへ早めに相談ください。
目次(Contents)
- 個人情報保護法
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(3省2ガイドライン)
- 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針
- 次世代医療基盤法(2023年改正)
- 薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
- 公的な相談窓口(PPCビジネスサポートデスク)
- 参考資料(Reference materials)
- 関連JPROページ(Related JPRO Pages)
1. 個人情報保護法
個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とした基本法です。医療・健康情報は「要配慮個人情報」に該当し、通常の個人情報よりも厳格な取り扱いが義務付けられています。
主な留意点
- 要配慮個人情報(医療情報等)を取得・利用する際は、原則として本人の明示的な同意(オプトイン)が必要です。
- 診療目的で収集したデータを医療機器開発等の営利目的で二次利用する場合は、利用目的を改めて具体的に特定した上で、本人から別途同意を取得することが原則です。
- Webサイト等で同意を取得する場合、本人が能動的に意思表示できる仕組み(チェックボックス等)と、同意記録の適切な保存が必須です。
- 収集した個人データの漏えい・滅失・毀損を防ぐため、「組織的」「人的」「物理的」「技術的」の4分野にわたる安全管理措置を講じる義務があります。
なお、医療・健康情報(要配慮個人情報)を扱う事業者にとっては、通則の一般ガイドラインより実務に即した『医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス』が特に参考になります。具体的な留意点・事例が示されており、取得・利用目的・安全管理措置・第三者提供などの実務対応の基準となります。
なお、個人情報保護法は「いわゆる3年ごと見直し」の検討が進んでおり、本人関与に関する規律(同意規制の在り方を含む)の見直しが議論されています。医療・健康データの利活用に関わる規律も影響を受けうるため、最新の検討状況もあわせてご確認ください。
参照先:法令・ガイドライン等(個人情報保護委員会), https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/
参照先:医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(個人情報保護委員会・厚生労働省), https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
参照先:個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しについて(個人情報保護委員会), https://www.ppc.go.jp/personalinfo/3nengotominaoshi/
2. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(3省2ガイドライン)
医療機関だけでなく、医療情報システム・サービスを開発・提供するITベンダーやスタートアップも対象となる重要なガイドラインです。
主な留意点
- 「組織的」「人的」「物理的」「技術的」の4つの安全管理措置について、網羅的な対策が求められます。
- 契約に基づき医療情報を取り扱う場合、委託元の医療機関に対して遵守状況を説明する責任を負います。
- 事実上の業界標準(デファクトスタンダード)であり、医療機関・取引先からの信頼を得るために本ガイドラインへの準拠は不可欠です。
また、健診結果・服薬歴・ライフログ等(健診等情報)を扱うPHRサービスを提供する場合は、別途『PHRサービス提供者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針』(総務省・厚生労働省・経済産業省、令和7年4月改定。旧称『民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針』)の遵守も想定されます。
参照先:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚生労働省), https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html
参照先:PHRサービス提供者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針(総務省・厚生労働省・経済産業省), https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/00phrshishin_20250428.pdf
3. 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針
大学・研究機関が実施する学術研究を主な対象とした倫理指針です。
主な留意点
- 営利目的の医療機器・医薬品開発には直接適用されませんが、大学との共同研究を伴う場合など、適用範囲の判断には注意が必要です。
- 研究開始前に、研究計画書について倫理審査委員会(IRB)の承認を得ることが必要です。
- 既存の診療情報を学術研究に利用する場合、研究内容を通知・公開し被験者が拒否できる機会を保障するオプトアウト方式により、個別同意の取得を省略できる場合があります。
参照先:人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(文部科学省), https://www.mext.go.jp/a_menu/lifescience/bioethics/seimeikagaku_igaku.html
4. 次世代医療基盤法(2023年改正)
要配慮個人情報である医療情報を、営利目的で医療機関から合法的に収集・活用するための仕組みを定めた法律です。2023年の改正により活用範囲が拡大されました。
主な留意点
- 国の認定を受けた「認定医療情報等取扱受託事業者(認定事業者)」を介してデータを収集します。
- 医療機関が患者に事前通知し拒否(オプトアウト)の機会を設けることで、患者個別の同意なしにデータ提供が可能になります。
- 2023年改正により、匿名加工に加えて仮名加工医療情報の取り扱いも可能となり、より実用的なデータ活用の選択肢が広がりました。
参照先:次世代医療基盤法(内閣府), https://www8.cao.go.jp/iryou/gaiyou/gaiyou.html
5. 薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
医療機器・医薬品の開発・製造・販売を規律する法律であり、個人情報の取り扱いとも密接に関係します。
主な留意点
- ソフトウェアを搭載またはネットワークに接続する医療機器は、薬機法の基本要件基準によりサイバーセキュリティ対策が義務付けられており、個人情報保護と一体で対応することが必要です。
- 治験・製造販売後調査で取り扱う個人情報は、GCP・GVP等の各種基準に基づき厳格に保護し、データの信頼性を確保する義務があります。
- 薬事申請時に提出する臨床データは被験者のプライバシー保護とデータの正確性が大前提であり、不適切な情報管理は申請資料の信頼性を損なうリスクがあります。
なお、開発品がそもそも医療機器(プログラム医療機器を含む)に該当するかどうかは、薬機法の適用範囲を左右する起点となります。判断にあたっては、『医療機器該当性確認ガイド』および『医療機器のクラス分類』もあわせてご参照ください。
参照先:医薬品・医療機器(厚生労働省), https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/index.html
6. 公的な相談窓口(PPCビジネスサポートデスク)
新しい製品・サービスで個人情報・仮名加工情報・匿名加工情報を利活用する際は、設計段階で個人情報保護委員会(PPCビジネスサポートデスク)に無料で事前相談できます。製品リリース後に設計をやり直すよりも、企画・設計の段階で論点を整理しておくほうが、手戻りとコンプライアンス上のリスクの双方を抑えられます。
参照先:PPCビジネスサポートデスク(要予約)(個人情報保護委員会), https://www.ppc.go.jp/personalinfo/business_support/
7. 参考資料(Reference materials)
- 法令・ガイドライン等(個人情報保護委員会), https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/
- 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(個人情報保護委員会・厚生労働省), https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
- 個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しについて(個人情報保護委員会), https://www.ppc.go.jp/personalinfo/3nengotominaoshi/
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚生労働省), https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html
- PHRサービス提供者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針(総務省・厚生労働省・経済産業省), https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/00phrshishin_20250428.pdf
- 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(文部科学省), https://www.mext.go.jp/a_menu/lifescience/bioethics/seimeikagaku_igaku.html
- 次世代医療基盤法(内閣府), https://www8.cao.go.jp/iryou/gaiyou/gaiyou.html
- 医薬品・医療機器(厚生労働省), https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/index.html
- PPCビジネスサポートデスク(要予約)(個人情報保護委員会), https://www.ppc.go.jp/personalinfo/business_support/
- ビジネスサポートデスク予約フォーム(個人情報保護委員会), https://www.ppc.go.jp/form/ppcbiz/entry/