医療機器・体外診断用医薬品 保険収載ガイド
本資料は、医療機器・体外診断用医薬品の保険収載に関する実務的な手順・タイミング・注意点を体系的に整理したものです。厚生労働省・PMDAの公開情報に基づき、開発企業が保険収載戦略を立案する際に必要となる情報を網羅的にまとめています。
第1章 保険収載の全体像と基本原則
1.1 保険収載制度の概要
医療機器・体外診断用医薬品の保険収載は、薬事承認取得後に厚生労働省が実施する公的医療保険での使用可否および価格設定の手続きです。薬事承認が「安全性・有効性」の観点からの承認であるのに対し、保険収載は「医療上の有用性・費用対効果」の観点から評価が行われます。
詳細は厚生労働省の「医療機器・体外診断用医薬品の保険適用について」に掲載されています。実務的には同ページ掲載のガイドブックを熟読することが基本となります。
1.2 医療機器の保険収載区分
医療機器の保険収載区分は以下の通りです。
C2区分は最も革新的な医療機器に適用される区分で、材料価格と診療報酬技術料の両方が評価対象となります。
1.3 体外診断用医薬品の保険収載区分
体外診断用医薬品は医療機器とは別の区分体系(E区分)が適用されます。医療機器のように材料価格が設定されるのではなく、検査項目ごとに点数(検査料)が設定される点が大きな特徴です。
区分選択の主なポイント:
E1区分として保険収載後、当初適用された検査点数が実態と乖離している場合、使用成績を踏まえた再評価を申請できる制度です。
第2章 保険収載までの標準的なプロセスとタイムライン
2.1 薬事承認前のステップ
保険収載の準備は、薬事承認申請と並行して開始するのが望ましいです。
(1)産業・情報課(産情課)への事前相談
薬事承認申請中に、厚生労働省保険局医療課産業・情報課との事前相談を実施します。相談内容には以下が含まれます。
(2)保険適用希望書のドラフト作成
事前相談と並行して、保険適用希望書のドラフトを作成します。
2.2 薬事承認取得後のステップ
(1)保険適用希望書の正式提出
薬事承認取得後、速やかに保険適用希望書を正式提出します。
保険適用希望書提出後、1〜2ヶ月程度で厚生労働省保険局医療課によるヒアリングが実施されます(E2・E3区分の体外診断用医薬品、およびC1・C2区分の医療機器が対象)。ヒアリングでは以下の内容が確認されます。
医療課ヒアリング後、中医協の下部組織である保険医療材料等専門組織(保材専)で審議が行われます。
標準事務処理期間:
(4)医療技術評価分科会での審議(医療機器C2区分の場合のみ・該当する場合)
C2区分の場合でも、医療技術評価分科会の審議は必須ではありません。 保材専が「医療技術評価分科会における審議の要否」を判断します。
医療技術評価分科会の審議が必要となるのは、以下の条件に該当すると保材専が判断した場合のみです。
保材専(および該当する場合は医療技術評価分科会)での審議結果を踏まえ、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で最終承認が行われます。承認後、官報告示を経て保険収載が確定します。最新スケジュールは中央社会保険医療協議会(中医協)公式ページで確認できます。
2.3 収載タイミングのまとめ
「体外診断用医薬品の保険適用に関する取扱いについて」、「2-(1)イ」、厚生労働省保険局医療課、令和8年2月13日通知
第3章 C2区分における特別な考慮事項
3.1 技術料収載の2年サイクル
C2区分において診療報酬上の新技術料の新設を求める場合、技術料の評価・告示は診療報酬改定時(原則2年に1回、偶数年の6月1日)にしか行われません。このため、材料価格(年4回収載可)とは異なり、技術料の収載機会は実質2年に1回となります。
診療報酬改定は健康保険法等に基づき原則2年に1回(偶数年)実施され、2024年度以降は施行日が従来の4月1日から6月1日に変更されています。タイミングを逃すと最大2年の遅延が生じるため、目標とする改定年度から逆算したスケジュール管理が不可欠です。
3.2 準用点数と決定点数
C2区分の医療機器は保険収載時に「準用点数(既存の類似技術料を暫定的に流用)」で収載されることが多く、正式な「決定点数」は診療報酬改定時に告示されるとされています。
第4章 提出書類と提出者
4.1 企業が提出する書類
4.2 学会が提出する書類
4.3 学会連携の重要性
学会との連携(特に保険委員)・KOLとの関係構築を早期から進めることが望ましいです。特に以下の局面で学会の協力が不可欠です。
第5章 技術料算定の根拠資料
5.1 外保連試案の活用
外科系学会が主体となる新技術では、外保連(外科系学会社会保険委員会連合)が作成する外保連試案が、技術料算出の標準的な根拠資料として重視されています。
外保連試案とは、手術・処置等の技術料の妥当性を示す根拠資料であり、関与する医療スタッフの人件費・所要時間・使用する材料費用等のデータをもとに技術料の目安額を算出するものです。
5.2 外科系以外の技術の根拠資料
神経内科系・リハビリテーション系など外科系以外の学会が主体となる技術については外保連を経由しないため、別の根拠資料(学会のレジストリデータ・主体研究データ等)が必要と言われています。いずれの場合も、企業主導の場合は薬事承認時の臨床データが重要となります。
5.3 治験段階でのデータ収集
薬事承認取得を目的とした有効性・安全性のエビデンス収集に加え、技術料算定に必要なデータを治験段階から収集しておくことが望ましいです。PMDAの「保険適用のための薬事承認取得の留意点について」でも、薬事と保険の一体的な設計の重要性が指摘されています。
治験の評価項目とは別に記録・収集しておくことが望ましい例は下記のようなものがあります。
第6章 不服申し立て制度
6.1 制度の概要
区分決定に不服がある場合は意見書を提出し2回目の専門組織審議を求める制度が設けられています(1回に限り)。
「医療機器の保険適用等に関する取扱いについて」、「6-(2)」、厚生労働省保険局医療課、令和8年2月13日通知
しかし実務上は以下の点に注意が必要です。
第7章 先駆的医療機器指定制度の活用
7.1 制度の概要
C2区分を目指すような革新的医療機器では、厚生労働省の「先駆的医療機器・体外診断用医薬品指定制度」の活用を検討することが望ましいです。
7.2 主なメリット
指定を受けることで得られる主なメリットは以下の通りです。
第8章 薬事・保険の一体的戦略
8.1 一般的名称と保険区分の連動
PMDAの「医療機器の一般的名称データベース」で確認できる一般的名称の定義・範囲が、保険収載区分(B区分:既存機能 vs C区分:新機能)の判断に直結します。既存の一般的名称に包摂される範囲でPMDA相談を進めると、C2での差別化が難しくなる場合があるため、一般的名称の設定段階から保険収載区分を意識することが望ましいです。
8.2 使用目的・効果の記載設計
薬事申請における「使用目的・効果」の記載内容が、保険審査における有用性評価の出発点となります。薬事と保険で整合性を持たせた記載設計を行うことが望ましいです。
8.3 PMDA相談と産情課相談の活用
PMDAの「RS総合相談・RS戦略相談」と、厚労省産情課への事前相談をうまく活用しましょう。
付録:主要な参考リンク
厚生労働省
「医療機器・体外診断用医薬品の保険適用について(ガイドブック・様式含む)」
「医療機器の保険適用等に関する取扱いについて(令和8年2月13日通知)」
「体外診断用医薬品の保険適用に関する取扱いについて(令和8年2月13日通知)」
「体外診断用医薬品の保険適用の取扱いに係る留意事項について(令和8年2月13日通知)」
「体外診断用医薬品に係る保険適用希望書の記載例等について」
「中央社会保険医療協議会(中医協)」
「先駆的医療機器・体外診断用医薬品指定制度」
「令和6年度診療報酬改定に向けた医療技術の評価方法等について(案) 」
PMDA
「医療機器の保険適用と安定供給について」
「保険適用のための薬事承認取得の留意点について」
「医療機器の一般的名称データベース」
「RS総合相談・RS戦略相談」
「先駆け審査指定制度」
関連団体
外保連「外科系学会社会保険委員会連合」
「革新的医療機器の保険収載プロセス」
本資料は一般的な情報提供を目的として作成されており、特定企業・案件への個別アドバイスを意図するものではありません。制度は随時改定されるため、最新情報は厚生労働省・PMDA等の公式ウェブサイトにてご確認ください。厚労省のガイドブックをベースに、必要に応じ保険専門のコンサル等も活用するとよいでしょう。
第1章 保険収載の全体像と基本原則
1.1 保険収載制度の概要
医療機器・体外診断用医薬品の保険収載は、薬事承認取得後に厚生労働省が実施する公的医療保険での使用可否および価格設定の手続きです。薬事承認が「安全性・有効性」の観点からの承認であるのに対し、保険収載は「医療上の有用性・費用対効果」の観点から評価が行われます。
詳細は厚生労働省の「医療機器・体外診断用医薬品の保険適用について」に掲載されています。実務的には同ページ掲載のガイドブックを熟読することが基本となります。
1.2 医療機器の保険収載区分
医療機器の保険収載区分は以下の通りです。
- A1区分(包括): 当該医療機器を用いた技術が診療報酬の算定方法に掲げられている項目によって評価されるもの(A2・A3以外)。収載タイミングは随時
- A2区分(特定包括): 特定の診療報酬項目において評価される特定診療報酬算定医療機器の区分に該当するもの。収載タイミングは翌月1日(各月10日までに受理されたもの)
- A3区分(既存技術・変更あり): 算定方法告示項目によって評価されるが、留意事項等に変更を伴うもの。収載タイミングは決定月の翌月1日
- B1区分(既存機能区分): 既存の機能区分に該当するもの。収載タイミングは翌月1日(各月10日までに受理されたもの)
- B3区分(期限付改良加算・暫定機能区分): 既存技術で評価されているが、既存機能区分に期限付改良加算を付すことについて中医協の審議が必要なもの。収載タイミングは年4回(3月・6月・9月・12月)
- C1区分(新機能): 算定方法告示項目によって評価されているが、新たな機能区分の設定について中医協の審議が必要なもの。収載タイミングは年4回(3月・6月・9月・12月)
- C2区分(新機能・新技術): 新たな技術料を設定し評価すべきであって、中医協において保険適用の可否について審議が必要なもの。収載タイミングは年4回(材料価格)/2年に1回(技術料)
- R区分(再製造): 再製造単回使用医療機器であって、新たな機能区分の設定について中医協の審議が必要なもの。収載タイミングは年4回(3月・6月・9月・12月)
C2区分は最も革新的な医療機器に適用される区分で、材料価格と診療報酬技術料の両方が評価対象となります。
1.3 体外診断用医薬品の保険収載区分
体外診断用医薬品は医療機器とは別の区分体系(E区分)が適用されます。医療機器のように材料価格が設定されるのではなく、検査項目ごとに点数(検査料)が設定される点が大きな特徴です。
- E1区分(既存項目): 測定項目・測定方法ともに既存の品目。収載タイミングは保険適用希望書受理日から起算して20日経過後
- E2区分(既存項目・変更あり): 測定項目は既存だが測定方法等が新しい品目で、E3に該当しないもの。収載タイミングは決定月の翌月1日
- E3区分(新項目・改良項目): 測定項目が全く新しいもの、または既存項目であっても技術改良により臨床的意義が大幅に向上するもの。収載タイミングは決定月の翌月1日
区分選択の主なポイント:
- E1区分は最もシンプルなルートで、手続き・審査ともに軽微です。既存の検査点数がそのまま適用されます
- E2区分は測定方法が新しい(例:自動化、精度向上等)が、測定対象(検査項目)は既存の場合に該当します。保材専の審議を経て決定されます
- E3区分は測定項目が新しい場合(例:新規バイオマーカー)または既存項目でも臨床的意義が大幅に向上した改良品が対象です
E1区分として保険収載後、当初適用された検査点数が実態と乖離している場合、使用成績を踏まえた再評価を申請できる制度です。
- チャレンジ申請を希望する製造販売業者は、保険適用希望書の提出時または保険適用日から起算して1年を経過する日までに、再評価を希望する内容・データ収集方法・評価方法に係る計画の参考となる資料を提出する必要があります
- 「体外診断用医薬品の保険適用に関する取扱いについて」、「2-(1)」、厚生労働省保険局医療課、令和8年2月13日通知
第2章 保険収載までの標準的なプロセスとタイムライン
2.1 薬事承認前のステップ
保険収載の準備は、薬事承認申請と並行して開始するのが望ましいです。
(1)産業・情報課(産情課)への事前相談
薬事承認申請中に、厚生労働省保険局医療課産業・情報課との事前相談を実施します。相談内容には以下が含まれます。
- 想定される保険収載区分(B区分 vs C区分、またはE1〜E3)
- 類似機能区分・類似検査項目の有無と比較
- 保険適用希望書の記載内容(ドラフトレビュー)
- 必要なエビデンスの種類と範囲
(2)保険適用希望書のドラフト作成
事前相談と並行して、保険適用希望書のドラフトを作成します。
- 所要期間は数ヶ月を見込むことが望ましいです。
- 産情課レビューには1〜1.5ヶ月程度かかると言われています。
- 様式・記載例(医療機器): 厚生労働省「医療機器に係る保険適用希望書の記載例等について」
- 様式・記載例(体外診断用医薬品): 厚生労働省「体外診断用医薬品に係る保険適用希望書の記載例等について」
2.2 薬事承認取得後のステップ
(1)保険適用希望書の正式提出
薬事承認取得後、速やかに保険適用希望書を正式提出します。
- 医療機器の提出様式は厚生労働省「医療機器の保険適用等に関する取扱いについて」に規定されています
- 体外診断用医薬品の提出様式は「体外診断用医薬品の保険適用に関する取扱いについて」に規定されています
保険適用希望書提出後、1〜2ヶ月程度で厚生労働省保険局医療課によるヒアリングが実施されます(E2・E3区分の体外診断用医薬品、およびC1・C2区分の医療機器が対象)。ヒアリングでは以下の内容が確認されます。
- 機能・性能・測定原理の詳細
- 類似品・類似検査との相違点
- 臨床的有用性のエビデンス
- 想定される使用実態と市場規模
- 希望する材料価格・点数の根拠
医療課ヒアリング後、中医協の下部組織である保険医療材料等専門組織(保材専)で審議が行われます。
標準事務処理期間:
- 医療機器 C2区分: 提出月翌月1日から5ヶ月以内(審査に係る標準的な事務処理期間が100日以上確保されたものに限る)
- 医療機器 C1・B3・R区分: 提出月翌月1日から4ヶ月以内(審査に係る標準的な事務処理期間が80日以上確保されたものに限る)
- 体外診断 E2・E3区分: 提出月翌月1日から5ヶ月以内(審査に係る標準的な事務処理期間が100日以上確保されたものに限る)
(4)医療技術評価分科会での審議(医療機器C2区分の場合のみ・該当する場合)
C2区分の場合でも、医療技術評価分科会の審議は必須ではありません。 保材専が「医療技術評価分科会における審議の要否」を判断します。
医療技術評価分科会の審議が必要となるのは、以下の条件に該当すると保材専が判断した場合のみです。
- 類似する既存技術と評価の整合性確保のために当該既存技術の見直しが同時に必要なもの
- 保険適用されていない医療技術を実施する目的で使用する医療機器
- オンライン診療での実施に係る技術料がない技術をオンライン診療で実施することを目的とする機器
- 複数分野で使用され、分野毎に異なる診療報酬点数が算定されるもの
- 管理料(医学管理料・在宅療養指導管理料等)の新設についての審議が必要なもの
- 「医療機器の保険適用等に関する取扱いについて」、「5」、厚生労働省保険局医療課、令和8年2月13日通知
- 「医療機器の保険適用等に関する取扱いについて」、「5-(5)」、厚生労働省保険局医療課、令和8年2月13日通知
保材専(および該当する場合は医療技術評価分科会)での審議結果を踏まえ、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で最終承認が行われます。承認後、官報告示を経て保険収載が確定します。最新スケジュールは中央社会保険医療協議会(中医協)公式ページで確認できます。
2.3 収載タイミングのまとめ
- 医療機器 A1・B1区分: 随時(翌月1日)
- 医療機器 C1・C2・B3・R区分(材料価格): 年4回(3月・6月・9月・12月の各1日)
- 医療機器 C2区分(新技術料を求める場合): 診療報酬改定時(2年に1回、偶数年6月1日)
- 体外診断 E1区分: 受理日から20日経過後(随時)
- 体外診断 E2・E3区分: 決定月の翌月1日
「体外診断用医薬品の保険適用に関する取扱いについて」、「2-(1)イ」、厚生労働省保険局医療課、令和8年2月13日通知
第3章 C2区分における特別な考慮事項
3.1 技術料収載の2年サイクル
C2区分において診療報酬上の新技術料の新設を求める場合、技術料の評価・告示は診療報酬改定時(原則2年に1回、偶数年の6月1日)にしか行われません。このため、材料価格(年4回収載可)とは異なり、技術料の収載機会は実質2年に1回となります。
診療報酬改定は健康保険法等に基づき原則2年に1回(偶数年)実施され、2024年度以降は施行日が従来の4月1日から6月1日に変更されています。タイミングを逃すと最大2年の遅延が生じるため、目標とする改定年度から逆算したスケジュール管理が不可欠です。
3.2 準用点数と決定点数
C2区分の医療機器は保険収載時に「準用点数(既存の類似技術料を暫定的に流用)」で収載されることが多く、正式な「決定点数」は診療報酬改定時に告示されるとされています。
第4章 提出書類と提出者
4.1 企業が提出する書類
- 保険適用希望書: 薬事承認取得後、随時提出。産情課への事前相談・ドラフトレビューを経ることが望ましい。
- 医療技術評価分科会への提案書(審議が必要とされた場合・医療機器C2のみ): 保材専審議日から3ヶ月以内、または診療報酬改定前年9月末日のいずれか早い日まで。厚労省通知様式に基づき作成
4.2 学会が提出する書類
- 適正使用指針 / 適正使用ガイド: 保険適用希望書提出前後。企業と学会が連携して作成することが望ましい
- 早期導入に関する要望書: 必要に応じて。学会の総意として提出
- 医療技術評価提案書(診療報酬改定に向けた学会からの提案)
4.3 学会連携の重要性
学会との連携(特に保険委員)・KOLとの関係構築を早期から進めることが望ましいです。特に以下の局面で学会の協力が不可欠です。
- 適正使用指針の策定
- 医療技術評価提案書の作成・提出(診療報酬改定時)
- 外保連試案の取得(外科系技術の場合)
- 早期導入要望書の提出
第5章 技術料算定の根拠資料
5.1 外保連試案の活用
外科系学会が主体となる新技術では、外保連(外科系学会社会保険委員会連合)が作成する外保連試案が、技術料算出の標準的な根拠資料として重視されています。
外保連試案とは、手術・処置等の技術料の妥当性を示す根拠資料であり、関与する医療スタッフの人件費・所要時間・使用する材料費用等のデータをもとに技術料の目安額を算出するものです。
5.2 外科系以外の技術の根拠資料
神経内科系・リハビリテーション系など外科系以外の学会が主体となる技術については外保連を経由しないため、別の根拠資料(学会のレジストリデータ・主体研究データ等)が必要と言われています。いずれの場合も、企業主導の場合は薬事承認時の臨床データが重要となります。
5.3 治験段階でのデータ収集
薬事承認取得を目的とした有効性・安全性のエビデンス収集に加え、技術料算定に必要なデータを治験段階から収集しておくことが望ましいです。PMDAの「保険適用のための薬事承認取得の留意点について」でも、薬事と保険の一体的な設計の重要性が指摘されています。
治験の評価項目とは別に記録・収集しておくことが望ましい例は下記のようなものがあります。
- 施術前の準備にかかる時間
- 施術(実施)にかかる時間
- 施術後の後処理にかかる時間
- 上記時間の代替(既存)技術との比較
- 習熟にどれくらいの症例が必要か
- 必要な医療スタッフの職種・人数
- 使用する消耗材料の種類・単価
- 入院期間の短縮につながるデータ
- 検査の頻度
- 判定に要する時間
- 施設側に必要な設備・空間等の要件
第6章 不服申し立て制度
6.1 制度の概要
区分決定に不服がある場合は意見書を提出し2回目の専門組織審議を求める制度が設けられています(1回に限り)。
「医療機器の保険適用等に関する取扱いについて」、「6-(2)」、厚生労働省保険局医療課、令和8年2月13日通知
しかし実務上は以下の点に注意が必要です。
- 実際には、不服申し立てによって審議結果が覆った事例はあまりないようです。
- 申し立てをすることでタイムロスが生じ、最短の収載機会を逃すリスクが生じます。
第7章 先駆的医療機器指定制度の活用
7.1 制度の概要
C2区分を目指すような革新的医療機器では、厚生労働省の「先駆的医療機器・体外診断用医薬品指定制度」の活用を検討することが望ましいです。
7.2 主なメリット
指定を受けることで得られる主なメリットは以下の通りです。
- PMDAによる優先相談・優先審査の対象となり、薬事審査期間の短縮(目標6ヶ月)が期待できます
- PMDAにおいてコンシェルジュ(審査パートナー)が配置され、承認審査のスケジュールに沿った定期的な進捗管理が受けられます
- 厚労省と連携した「先駆け総合評価相談」を通じて、薬事・保険にまたがる省内横断的な支援が受けられます
- 審査・相談の流れの詳細はPMDAの「先駆的医薬品等指定制度(先駆け審査指定制度)」ページに掲載されています
第8章 薬事・保険の一体的戦略
8.1 一般的名称と保険区分の連動
PMDAの「医療機器の一般的名称データベース」で確認できる一般的名称の定義・範囲が、保険収載区分(B区分:既存機能 vs C区分:新機能)の判断に直結します。既存の一般的名称に包摂される範囲でPMDA相談を進めると、C2での差別化が難しくなる場合があるため、一般的名称の設定段階から保険収載区分を意識することが望ましいです。
8.2 使用目的・効果の記載設計
薬事申請における「使用目的・効果」の記載内容が、保険審査における有用性評価の出発点となります。薬事と保険で整合性を持たせた記載設計を行うことが望ましいです。
8.3 PMDA相談と産情課相談の活用
PMDAの「RS総合相談・RS戦略相談」と、厚労省産情課への事前相談をうまく活用しましょう。
付録:主要な参考リンク
厚生労働省
「医療機器・体外診断用医薬品の保険適用について(ガイドブック・様式含む)」
「医療機器の保険適用等に関する取扱いについて(令和8年2月13日通知)」
「体外診断用医薬品の保険適用に関する取扱いについて(令和8年2月13日通知)」
「体外診断用医薬品の保険適用の取扱いに係る留意事項について(令和8年2月13日通知)」
「体外診断用医薬品に係る保険適用希望書の記載例等について」
「中央社会保険医療協議会(中医協)」
「先駆的医療機器・体外診断用医薬品指定制度」
「令和6年度診療報酬改定に向けた医療技術の評価方法等について(案) 」
PMDA
「医療機器の保険適用と安定供給について」
「保険適用のための薬事承認取得の留意点について」
「医療機器の一般的名称データベース」
「RS総合相談・RS戦略相談」
「先駆け審査指定制度」
関連団体
外保連「外科系学会社会保険委員会連合」
「革新的医療機器の保険収載プロセス」
本資料は一般的な情報提供を目的として作成されており、特定企業・案件への個別アドバイスを意図するものではありません。制度は随時改定されるため、最新情報は厚生労働省・PMDA等の公式ウェブサイトにてご確認ください。厚労省のガイドブックをベースに、必要に応じ保険専門のコンサル等も活用するとよいでしょう。