化粧品及び医薬部外品
*特定の消費者向け製品は、何を訴求するかによって化粧品になったり、医薬部外品になったりします。
ここでは例として、日焼け止め製品を使って説明します。
薬事規制
化粧品と医薬部外品の比較
■化粧品
業許可
製品分類(化粧品または医薬部外品)に関わらず、日本市場に製品を上市する事業者は、2種類の主要な業許可を取得する必要がある。
海外企業の参入方法
アプローチ
@K.Kamitani
ここでは例として、日焼け止め製品を使って説明します。
薬事規制
- 薬事規制:化粧品か、医薬部外品か?
- 日本で販売されるすべての日焼け止め製品は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称:薬機法)の規制対象となる 。
- この法律に基づき、製品は「化粧品」または「医薬部外品」のいずれかに分類されなければならない。この分類は、市場参入における最初の、そして最も重要な戦略的決定である。なぜなら、この選択が、薬事申請プロセス、許容されるマーケティング上の訴求(効能効果の表示)、そして製品が市場に出るまでの時間とコストを根本的に決定づけるからである。
- kyotokesyouhinrihureto.pdf
- 化粧品 (Cosmetics)
- 薬機法において「化粧品」は、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの」と定義される 。日焼け止めを化粧品として販売する場合、その手続きは比較的簡素な「届出制」であり、迅速な市場投入が可能である。しかし、表示できる効能効果は厳しく制限されており、「肌をうるおす」「肌のキメを整える」「日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ」といった穏やかな表現に限られる。有効成分を配合していても、「美白」や「シワ改善」といった、より踏み込んだ効果を謳うことはできない。また、容器には全成分を表示する義務がある。
- 医薬部外品 (Quasi-Drugs)
- 一方、「医薬部外品」は、特定の目的(例:にきびを防ぐ、肌荒れを防ぐ、美白など)に対して、厚生労働省が承認した有効成分を一定濃度配合した製品である 。これにより、「化粧品」では不可能な、より具体的で説得力のある効能効果を製品パッケージや広告で表示することが可能になる。例えば、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」(美白効果)や「シワを改善する」といった訴求が可能となり、高機能性を求める消費者に強くアピールできる 。しかし、その代償として、市場投入前に品目ごとに厚生労働大臣の「承認」を得る必要があり、そのプロセスは化粧品の届出に比べて格段に複雑で、時間とコストを要する。承認申請には、製品の品質、有効性、安全性に関する詳細なデータをまとめた資料の提出が求められる 。
化粧品と医薬部外品の比較
■化粧品
- 薬事上の手続き: 都道府県知事への届出
- 市場投入までの期間: 短期間
- 許容される効能効果の表示: 作用が緩和な範囲に限定(例:「肌にうるおいを与える」)
- 成分に関する規制: 化粧品基準に準拠。ポジティブリスト・ネガティブリストが存在
- 表示義務: 全成分表示が義務
- 戦略的意義: 迅速な市場投入、マス市場向け製品に適する
- 薬事上の手続き: 厚生労働大臣による承認
- 市場投入までの期間: 長期間
- 許容される効能効果の表示: 承認された範囲内の具体的な効果(例:「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」)
- 成分に関する規制: 承認された有効成分を規定濃度で配合。添加物にも規制あり
- 表示義務: 有効成分、その他の指定成分の表示義務
- 戦略的意義: 高機能・高付加価値を訴求、プレミアム製品、特定の肌悩みに対応する製品に適する
業許可
製品分類(化粧品または医薬部外品)に関わらず、日本市場に製品を上市する事業者は、2種類の主要な業許可を取得する必要がある。
- 製造販売業許可 (Marketing Authorization Holder - MAH License)
- これは、日本国内で製品の品質および安全性に関する最終的な責任を負う事業者(元売業者)に与えられる許可である 。製造販売業者は、製品の市場への出荷可否を決定し、市販後の安全管理(GVP: Good Vigilance Practice)および品質保証(GQP: Good Quality Practice)体制を構築・維持する義務を負う 。この許可は、事業所の所在地を管轄する都道府県に申請する 。
- 製造業許可 (Manufacturer License)
- これは、製品の製造工程の一部または全部を行う製造所ごとに与えられる許可である 。海外から輸入された製品の場合、日本国内で日本語ラベルの貼付、包装、または製品の保管といった作業を行う場所が「製造所」と見なされ、この許可が必要となる 。たとえ製品が海外で最終製品化されていても、日本で販売するための表示作業を行う以上、この許可は必須である。許可は、包装・表示・保管のみを行う「包装等区分」と、より広範な製造行為を含む「一般区分」などに分かれている 。
海外企業の参入方法
- 日本法人の設立
- 日本に法人を設立し、総括製造販売責任者をはじめとする有資格者を雇用し、自社で直接MAHライセンスを取得する。この方法は、日本市場でのオペレーションを完全にコントロールできるという最大の利点があるが、多額の初期投資、人材確保、そして許可取得までの長い時間を要するので、特に中小企業にとっては現実的でない。
- MAH(またはDMAH)に委託
- 化粧品、医薬部外品いずれでも、日本国内で既に適切なMAHライセンスを保有する第三者企業に、薬事規制に関するすべての業務を委託する方法が望ましい。
- 医薬部外品の場合は、DMAH (Designated Marketing Authorization Holder)の活用が最も効率的である。これは、日本に事業所を持たない海外製造業者が、「外国特例承認制度」を利用して自らが承認の主体(外国製造医薬品等特例承認取得者)となりつつ、国内での規制対応をDMAHに代行させる制度である。この方法は、迅速かつ低コストで市場参入が可能となるため、多くの海外企業にとって現実的かつ効果的な選択肢である。
アプローチ
- まずは、薬事的に化粧品、医薬部外品になるか、したいか等について、公的機関の相談窓口で壁打ちすることをお勧めします。
- 消費財の場合、流通、マーケティング面の検討も重要となります。日本では、流通が複雑であり、また、消費者はブランドロイヤリティが高いため、中小企業が大手企業と戦うには大きな障壁があります。スピード感も医療用医薬品とは違って非常に早いので、経験のある専門家からの助言が役に立ちます。
- 方向性が決まってから、薬事コンサルタント・コンサルティング企業または直接製造販売業者の探索をするとよいでしょう。
- 海外企業の場合、まずは在日のコンサルタントや契約社員の採用から始めるとよいでしょう。
@K.Kamitani