職務発明の概要
アカデミア・研究機関で行われた発明は、ほとんどの場合職務発明(権利者は自分でなく所属機関)となります。注意すべき点をまとめました。
目次
- 職務発明とは
- 原始使用者帰属
- 相当の利益
- 研究者が注意すべきポイント
- 発明から出願までのフロー
- TLO(産学連携組織)の活用
職務発明とは
職務発明とは、特許法第35条で定められた、以下の3つの要件をすべて満たす発明を指します。大学や公的研究機関における発明のほとんどは、これに該当します。
- 1. 従業者等の発明であること:
大学の教職員や研究員、公的研究機関の職員などによってなされた発明。 - 2. 使用者等の業務範囲に属すること:
発明の内容が、所属する大学や研究機関の研究・教育活動の範囲に含まれること。 - 3. 従業者の職務に関連すること:
発明を完成させる行為が、研究者自身の現在または過去の職務(研究テーマや担当業務)に属していること。
https://www.jpo.go.jp/support/startup/document/index/shokumuhatsumeiseido.pdf
原始使用者帰属
2015年の特許法改正により、機関は規程等であらかじめ定めることで、発明が完成した瞬間から直接その権利を取得する「原始使用者帰属」を明確に採用できるようになりました。これにより、権利の帰属が明確かつ安定的になり、ほとんどの大学・研究機関がこのモデルを採用しています。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/shokumu/document/shokumu_university/11.pdf
相当の利益
発明の権利を機関に帰属させる見返りとして、発明者には「相当の利益」を受け取る権利が法律で保障されています。
利益の種類
企業では数万円の一時金のみ、といった例が多いですが、アカデミアや研究機関によっては、ライセンス収入の一部を発明者に分配する「補償金」やロイヤリティ分配などの制度を設けているところもあります。所属機関の規定を確認しましょう。
研究者が注意すべきポイント
発明の届出
職務発明を行った場合、通常は所属機関の知財部門に発明届をします。論文発表を先にしてしまうと新規性を喪失してしまいますので注意しましょう。
研究者の異動(転職)
研究者が所属機関を移動した場合、発明の取り扱いは、原則的には、発明が完成した時点で所属する機関のルールに基づきます。ただし、移動前の所属機関でほとんどの研究・発明行為がおこなわれていた場合など、状況により問題となることがありますので注意が必要です。
利益相反の管理
職務発明を基に起業する場合など、研究者個人の利益と所属機関の利益が衝突する可能性があります。必ず機関のルールに従い、事前に利益相反委員会等に相談・開示し、適切に管理する必要があります。
企業との共同研究
企業や他機関と共同研究を行う際は、必ず研究開始「前」に契約を締結し、特に以下の点を明確に定めます。
- 各者が持ち寄る既存知財の範囲
- 新たに生まれる発明の所有権
職務発明から出願までのフロー
研究者が発明を行った場合の一般的なフローです。
発明の届出
研究者は発明を完成させた場合、遅滞なく所属長を経て機関の長に届け出ます。
権利承継の決定
機関は発明委員会等の議を経て、その発明に関する権利を機関が承継するかどうかを決定し、研究者に通知します。
特許出願
機関が権利を承継すると決定した場合、機関が特許出願等の手続きを行います。
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H160401K0020.pdf
まずは知財部門(TLO:産学連携部門)に相談
大学や研究機関では、産学連携部門(TLO)内に知財部門が設置されています。機関によっては、発明届がトリガーになり、産学連携部門の担当者がアサインされて伴走支援が始まりますので、知財については、まずは所属機関の知財部門(TLO)に相談しましょう。
https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/tlo.html