Summary of Australia R&D Tax Incentive
はじめに
- ここでは、オーストラリアの研究開発優遇税制(R&D Tax Incentive)について、ポイントを日本語でなるべくわかりやすく解説します。
研究開発税制優遇スキームとは
- この税制優遇スキームで、我々が知りたい内容を一文で簡単にまとめると、以下となります。
- 「適格な企業」が、「適格な研究開発活動」を行う場合、「適格な研究開発費」についての適用を「政府に申請」すれば、「費用の最大43.5%が税控除され現金還付もされる」、という太っ腹な制度である。
- オーストラリアは、個人の所得税控除でも大幅な減税策を行なっており、国の税収大丈夫なんだろうかと心配してしまいますが、制度がある以上これを活用しない手はありませんね。
- 当スキームの適格性は自己判断(self assessment)となります。詳しくは、オーストラリア政府HPまたは現地代行業者にご確認ください。
- 参考URL
- 研究開発に関する法人税優遇スキームに関するオーストラリア政府HP(Overview of the R&D Tax Incentive)
- 政府が概要をコンパクトにまとめたPDF資料(RDTI At a glance flyer)を発行しています。
- ビデオでの簡単な解説(A short guide to the R&D Tax Incentive)もあります。
適格な企業
- 下記いずれかに該当する企業とされています。
- オーストラリアもしくは外国法下で設立された法人
- 外国法下で設立されたが、所得税の観点からオーストラリア企業とされる者
- 外国法に基づく法人であり、以下の条件を満たす場合
- オーストラリアと租税条約を締結している国の居住者であり、
- 二重課税協定に定義された恒久的施設を通じてオーストラリアで事業を行っている
- その他細則あり
- 簡単に言えば、日本企業でオーストラリア未進出であれば、現地法人の設立が必要となります。
- 参照URL
- Check if you're eligible for the R&D Tax IncentiveのEligible entitiesを参照
適格な研究開発活動
- 対象となる研究開発活動としては、少なくとも1つの中核的な研究開発活動(Core R&D activity)を実施、または実施予定である必要があります。また、補助的な研究開発活動(Supporting R&D activiites)は、中核的な研究開発活動に直接関連するものでなければなりません。
- 詳細は省きますが、新しい知見を生み出すために、科学の原則に基づき、仮説、検証、評価を経て論理的な結論を導き出そうとするプロセス、つまり一般的に私たちが考える科学的な研究開発活動であれば、該当する可能性が高いことになります。もちろん臨床試験も研究開発活動として認識されています。
- 自身の活動が研究開発活動に該当するかは、下記政府HPを参照ください。ただし、具体例が載っているわけではないので、政府HP又は代行業者に相談することをお勧めします。
- 参照URL
適格な研究開発費
- 課税年度内に支払った費用で、前述の適格な研究開発活動に関連する費用を指します。例えば、人件費、臨床試験の外注費用、研究開発活動に使用される資産の減価償却費などが該当します。利息、コア技術、施設建設費等は対象外となっています。
- 各費用の該当性詳細については、政府HP又は代行業者にご確認ください。
- 参照URL
- Eligibility for R&D tax offsetsのEligible expenditure
- Expenditure you can claim
税控除
- 売上高により、還付型税控除と、非還付型税控除に分かれます。売上高はオーストラリアだけでなく日本の本社を含む企業全体の総売上高です。
- 還付型税控除
- 年間総売上高が2,000万豪ドル未満の場合、研究開発費の43.5%(基本法人税率25%+18.5%のプレミアム)に相当する金額が税控除となり、現金による還付も申請できます。
- 売上が限定的なスタートアップの多くは、この還付型税控除に該当するかと思います。
- 非還付型税控除
- ①総売上高と②年間支出に対して研究開発費が占める割合によって、税控除率が異なります。
- 売上高が小さく、また研究開発比率が高い企業が優遇されるということです。
- 実際の税控除金額の計算方法は省略しますが、いずれも法人税率に加えてプレミアムを乗せた税控除率を使いますので、通常の法人税控除との差分がほぼ純便益となります。
- 実際の税控除金額については、政府HP又は代行業者との相談時にご確認ください。
所轄官庁
- 研究開発税制優遇スキームは、オーストラリア政府の、ATO(Australian Taxation Office)と、AusIndustryの2部門によって運営管理されています。
- 主な役割としては、ATOは研究開発費の適格性を審査し、AusIndustryは研究開発活動の適格性を審査します。
- ATOは日本の財務省や税務署、AusIndustryは日本の経済産業省や中小企業庁に近いかもしれません。
- 問い合わせ